「日本の心」ともいうべき【花火】。
夜空を彩る花火をモチーフにした様々な台の中で、一際鮮やかにその世界観を描写した機種。そう
【花火百景】
菊池が出会った初めてのスロットである。
当然やり方も知らなければ目押しも出来ない。100円で30クレジット貰えるゲームセンターで、毎日通って遊戯した。
「大当たり」
と出たら当たり、という発想から
「どうも花火が小さいとダメだな」
「派手な打ち上げ花火が上がると当たるな」
そんな当たり前の気付きを経て、
「なぜ派手な花火が上がったのに当たっていないのか?」
と考えて対応役という概念、その対応役を
「狙った上でハズレたらその時に当たっているんだ!」
と少しずつ、だが確実に学んでいく。
こうした気付きの連続や発見を繰り返すことが、熱中しやすくのめり込みやすい性格の彼にはとても楽しかった。
しかし、連日遊んでいるにも関わらず目押しがなかなかうまくならない。
必死に目を上下に動かして図柄を追うが見えない。
高速で瞬きをしてみたり、首を縦に振ったりしてみたが、どうしても図柄を認識できず、全ての色がごっちゃに見えていた。
そんなある時、立ち上がって少し遠くから回っているリールを眺めて「見えねぇなぁ…」と首をかしげた瞬間に違和感を覚える。
「…?!あれ?今一瞬リールがゆっくり…」
ゆっくりなど回っているはずはないが、人間の目の動き自体が縦の動きよりも横の動きに対応する力が強いことを偶然発見したのだ。
ゲームセンターだからこそ可能だったわけだが、立ち上がって遠くから眺めたことで回転中の図柄を認識出来たことが劇的に目押しを上達させた。
ボーナス図柄はある程度揃えられるようになり、通常時のチェリーや山も獲得出来るようになっていった。
とはいえ、回転するリールを、首を45度に傾けた若者が眺めていたらそれは目立つだろう。
この時すでに、菊池に忍び寄る影があったことに彼はまだ気がついていない。
第7話へ続く↓↓↓
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