新たに井岡を加えた4人チームとなって臨むノリ打ちの日々が始まった。
データ取りからの作戦会議。柳川が仕切り翌日の狙い台候補をピックアップしていく。
菊池の能力はまだ養分に毛が生えた程度。データ取りも、最終ゲーム数をチェックすることと出目をチェックするくらいだったが、他のメンバーの取ってきているデータの細かさに驚く。
ゲーム数や出目はもちろんのこと、前回のモードの推測、最後に出ていた演出やモード示唆の種類、クレジット内に1-2枚のメダルが入っていればそれすらチェックし、店長がウロウロしていたらどの辺を見ていたかまで報告した。
事細かに分析された翌日の狙い台を、早起きを制して各々確実に確保し、お昼すぎには連チャンを取り切って落ち合う。それぞれの投資枚数と獲得枚数を照らし合わせ全てを合計して4人で分配する。この精算をきっちり100円単位までやり続けたことで彼らの信頼は「スロットで勝とう」というものから、ひとつの友情物語へと昇華してゆくこととなる。
ちなみに、端数はメダルを出した人のご褒美となり、柳川、町田はタバコ、井岡、菊池はいつもお菓子に交換していた。
その際のエピソードで「チョコボール」に交換するおり、菊池が井岡に
「金のエンゼルを引く気がする…」
と宣言し、
「引けたら晩飯奢るよ」
と笑われた刹那、金のエンゼルは降臨したのだった。割愛
そんな日々が続き、毎月のノリ打ちの一人あたりの取り分は50万円から60万円前後で安定し、昼過ぎから夜までは自由行動となる。その間にも打てる台を探し続ける柳川や町田は月に100万近い収支を叩き出していた。
その間に菊池は、ストリートライブやマジックの仕事に精を出し、いつか起業する為の人脈作りに奔走していくこととなる。
大学を心理学の授業以外完全にサボって…
ある日事件は起きた。
それまで見た事がなかった若い数名が夜来店し、ウロウロしている。
柳川は瞬時に(あれはライバルになるぞ)と見抜き、皆に夜のミーティングで伝えた。
ちょうどその夜は静かで穏やかな優しい風が吹き、夏の終わりと秋を告げるような月の綺麗な夜だった。
第19話へ続く↓↓↓