この年の白い吐息をはじめて確認した早朝5時前。いつもの自販機で缶コーヒーを買い、ホットにすれば良かったなと少し後悔した気持ちとリンクするかのように、この日はいつにない早起きも相まってなんだか変な胸騒ぎがしていたが、菊池はホールへと急いだ。
ホールに到着すると、柳川と町田はすでにコーヒーを飲みながら座って待っていた。
「菊池くんおはよ!!」
という町田の明るい声。
「ほれっ!」
と柳川から投げ渡されたホットの缶コーヒーに緊張していた心が緩み、一息ついた頃、井岡ものっそりと合流した。
すると柳川が言った。
「さて…ヤツらは何時に来るかな」
「だな…」
と町田が軽く答える。
来ることは彼らの中では前提なのだ。
しばらく談笑が続き、町田が犬を飼っていること、柳川が極度の女好きなこと、そして何より井岡は元水泳選手で県代表候補だったこと、要するにマッチョだったことが驚きだった。
その時だった。
まだ静かな6時前の街に大きな笑い声が谺響する。その声が少し下品に聞こえたのは敵対視する昨日の下見グループだったから、だろうか。
その中の1人がこちら側に気が付き
「まじかよー!」
と大きな声で言った。
恐らくは6時に行けば間違いないだろうと思って集合していたのだろう。こちらに気が付き驚いたのだ。
「やっぱり来たか。けど、思ったより早いな…」
柳川はもう少し遅めの時間を見越していたものの念の為に5時という時間を設定していた。
その采配は功を奏し、菊池達4人はそれぞれの狙い台4台を確保することにすんなり成功。
するはずだった。
第21話へ続く↓↓↓