まもなく話題の新台「押忍!番長」が大都技研よりリリース。大ヒット機種「吉宗」の後継機とあって巷の話題をかっさらっていた。
しかし「A-400 ST」ということもあって
(スペックは大丈夫か?)
という懸念も同時に飛び交っていた。
そんな初夏の日差しに新緑の葉が緩れる爽やかな昼下がり。
菊池はこの日も朝からホールへ出向いていた。
が、何も打ってはいなかった。
独り立ちを申し出てはみたが苦戦し、彼がとった作戦とはいわゆる『見』だったのだ。
けん、といえば響きは良いが、要するに何をすべきか見つけられず、だが浪費することは避け、それでも転がってくるチャンスだけは拾えるように努めていた。
スロットが大好きなのに打てない、という苦しみはスロッターならば理解に容易いだろう。
だがここで我慢が出来ないと勝てないのが鉄則だと肝に銘じ、「まぁこの辺ならいいか」という甘えた考えを捨てた。
この勝てないスロッターにありがちな「この辺なら」という邪念を捨てる戦いこそが本当の闘いなのだ。
現代で言えば、例えば凱旋の天井。
万枚フラグになり得る強力なものではあるが、この期待値が等価なら300ゲームあたりからプラスになるとされている。これはさすがにあまりにも、であるが、例えば現実的に800ゲームから天井を目指すと決めているスロッターの場合、750ゲームで落ちている台を「打たない」ことが大切なのだ。
この当時で言えば吉宗の天井などが当てはまるが、柳川達もこれを徹底していた。それを取られて打たれても全く気にしないのだ。
1年弱それを見てきた菊池は「打たない強さ」を知っていた。そしてどうしても遊びたいのなら最もよさげな合算になっているAタイプの台を探すか、1でも技術介入で割数100%という台で時間を使うことを心がけた。
夕刻に時々回ってくる打てる台を打ち、うっすらと収支をあげていたある日、菊池はあることに気がついた。
第33話へ続く↓↓↓