柳川に独り立ち宣言をした以上、なんの成果も出さずにのこのこと戻ることは許されない。そして【スロプロ】として稼がないなど許されない。
柳川は常々言っていた。
「俺はスロットが嫌いだ」
毎日毎日、来る日も来る日も共に打っている柳川がこう発言するのは、好きこそ物の上手なれであらゆることに挑むことが信条の菊池には意外だった。
ある時その真意を尋ねたことがある。
「始めた頃は好きだったよ。何も考えずに打ってるのは楽しかったなぁ。でもこれで食ってこうって決めた日に嫌いになる決意をしたんだ。好きだけで打てば我慢が効かなくなるからね。」
ストイックだった。この生き方はこの先の柳川の人生においても反映され、彼の生き様は男気に溢れる一本道のようだった。
そしてこの表現から読み取れるように、菊池と柳川はいずれそれぞれの道を歩み出すことになるが、それはまだまだ先のこと。
菊池はスロットが大好きだ。それは10数年経た今でも変わらない。だがこの頃はまだまだ「大量獲得の一撃性」に魅入られており、10万負けても良いから熱くなりたい!といった欲に振り回されることも多かった。
その彼に決意させたのは【スロプロ】という言葉の重みか。
世間からは外れ、己が道を歩む孤独な世界。
しかし共に歩みを進める仲間が現れ、終わりなき解析攻略の果てに彼らは何を見るのだろう。
(よし、徹底してジャグラーを打とう。そして収支を上げていこう。)
決意から行動に移すのは得意だった。
その日の夕刻、未だ0回転の台が並ぶ店内で菊池はまず変更判別が効くのかを試してみた。
数台、ざっくりとした判別をしながらカニ歩いた。
が、3台、4台と渡り歩くも変更気配がない…そんな中、運良く2台、BIGを引くもその両方でクレジットは落ちず…
だが菊池は少し安心した。これでクレジットが落ちて5が確定してしまった場合、翌日から闇雲に設定を探す羽目になる。
出来れば設定変更を見抜けた台でクレジットが落ちてくれることを願った。だがこの日は変更判別が出来た台には出会えず、翌日再チャレンジとなった。
第35話へ続く↓↓↓
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