人生観を語る時、
『人生はいつでも自分が主役である』
と常々考えている菊池も、では
「他人はどうでも良いのか?」
というとそれは違う。
誰かのために生き抜いてこその人生なのだ。
仲間は多い方が良い。力になってくれる人は多い方が良い。そして誰かの為に力になれるのはカッコ良い。何より幸せだ。
世間では縄張り争いや談合などが平然と行われ、裏切りや嫉妬の嵐が渦巻く中にあって、菊池は柳川や町田、井岡にスロットを惜しみなく教えて貰い、また日頃からとても優しく接して貰っていた。本来、己のテリトリーに入ってきた者を追い出すのが世の常なのに、だ。
菊池はそのことからもひとつ学び、お琴屋の山川の相談に、ジャグラーの海老(推定設定5)が連日探せる場所、さらに独自に発見した狙い台の法則、更には山川が仕事の際は山川が来店するまでに海老を見つけて譲ることすらあった。
なんの為の人生、と聞かれれば、それ即ち『大切な人の為』の人生なのだ。それが恩義ある山川となればそれもまた至極当然のことである。
そんな生活が1ヶ月ほど続いた。
それからしばらくして、菊池は柳川に
「今晩食事でもどうですか?」
と連絡を入れた。
自ら独り立ちを希望し、半年が経とうとしていた。
しかし以前のように軽い気持ちでメールをしたというわけではない。
心の中では
(また一緒にノリ打ちして欲しいと告げたら拒否されないだろうか?)
(ほかのメンバーがいるかもしれないな…)
という不安な気持ちは拭えなかった。
日頃から女の子とのやりとりを欠かさない柳川からは光の速さで返信が返ってくる。
「あいよ!きくっつぁんもデータ取りおいで!」
柳川はそんな菊池の気持ちを全て汲み取るかのように、『いつも』のテンションで答えてくれた。菊池にはその優しさが沁みた。
データ取りに合流し、「おう!」と声をかけられ「久しぶり!」と少し照れて言う菊池に「きくっつぁんはあれとこれとそれと…」と柳川はテキパキ指示を出した。
言われるままデータ取りを終え、じゃあステーキ行くか!といつものお店へ。
そこには先にデータ取りを終えた町田と井岡も待っていて、「おかえり!の人は王様定食ね!」と微笑んでいた。
菊池は「また一緒にノリたいんだけど」という言葉を飲み込み、
「ただいまー」とこの上ない笑顔で頷いた。
第42話へ続く↓↓↓