絶望視された5号機時代の到来。
初めての5号機「エヴァンゲリオン」は、コイン持ちがよく通常時にとにかく回るからお金が入らない。
お金が入らないからメダルも出ない。
出ないから面白くない。
4号機の爆裂時代には、「時速5,000枚」や「天井で1度当てるまで7万円」などの激しさがあった。7万使ってでも3,000枚出れば一種の満足感は味わえた。
この頃のスロッターは、麻痺した感覚によってじわじわ1万円負けるのでは何も満たされなくなっていたのだ。
それなのに2019年現在では、何度となくシリーズがリリースされたエヴァンゲリオンの中にあっても、初代のエヴァンゲリオンは名機のひとつとして語り継がれているから不思議なものである。
話を戻そう。
回るからお金が入らない。
お金は入らないが出る。
出る!?
この違和感こそ「ハイスペック5号機」の最大の特徴と言える。
規制によって万枚は夢物語となり、いずれ伝説の中の1文となる予定だったが、リプパンはずしによる機械割の高さから、時間はかかるものの大量のメダルを獲得出来る時代が到来した。そしてこの頃の5号機ではいわゆる「事故」あるいは「誤爆」と呼ばれるような現象は極めて起こり辛く、その代わり設定に忠実に出る傾向にあった。
「おおお!菊池くん!!それ熱いよ!!」
真っ暗になった菊池のリンかけをのぞきこむようにして町田が続けた。
「ここでどこを押すかなんだけど、とりあえず逆押しで上段あたりに青いチェリー押してみて!」
「あ、青いチェリー??」
と焦る菊池。この頃はまだ直視がだいぶ出来るようになったレベル。
「じゃあ、赤7を枠枠下押すイメージで!」
これだから天才肌は困るなと菊池は思いつつも、えい!と押してみた。
するとまだ目押しの感覚も甘い菊池でもハッキリ分かるほどににゅる〜んと竜児の図柄が上段まで降ってきた。
「まっちゃん、これは!?」
と興奮気味に問いかける以上に興奮気味の町田が答える。
「中リールは青チェリーしたのスイカを狙って!!」
「いや、だからそう言われましても…まっちゃん押して!」
「よっ」
あっという間に押して見せた町田の興奮は更に増す。
「お!ビタっとスイカテンパったね!これスイカ揃ったら今のところ全部当たってるよ!黒の塊を枠内遅めくらいに押して!!」
この頃には、ボーナス優先の制御が多く、小役と同時成立している場合に限りいつもより余計に滑るなどのリール制御が施され、プレイヤーを熱くさせる要因の一つとなっており、隠し味というにはあまりに旨すぎるほどの面白さをもたらした。
リングにかけろ1はまさにその代表格である。
その中でもこの「回想演出」の熱さ、押し所はピカイチであった。
第62話へ続く↓↓↓