イランでのコンサートを終え、ここからカタール、バーレーン、オマーン、クウェートと約1ヶ月にかけて全5カ国を弾き歩いた菊池。
アラブ湾岸諸国ツアーはこの先様々な出会いとトラブル、そして多くの感動に溢れたものとなる。
砂漠でバギーを走らせ靴の中が砂まみれになったかと思えば、気高い山々を徒歩で登り小袋がはぐれて1人で登頂していたりした。
石油王に気に入られて手厚い歓迎を受けたかと思えば、さらに感動した奥様に抱きつかれ、外交官の「決して女性には触れないでください!」の言葉が脳裏に浮かびこれで終わったかと思ったりもしたが、それを凌駕する感動を与えることが出来ていたお陰で石油王も笑って握手を求めてくれた。
演奏場所が遊園地の特設ステージで、数分に1回の割合で「ギイヤァァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」というジェットコースターの乗客の悲鳴がこだまする中演奏をしたり、300席のホールに1,500人のお客様が押し掛け通路からロビーまでパンパンになったこともあった。
その時大変だと感じたこと全てがいまの菊池の血となり肉となり、出会った全ての人の優しさがそのまま心を豊かにし、そしてかけがえのない経験は思考を飛躍的に深くした。
人生において恐らく1度行くかどうかのアラブ諸国での経験は、演奏家としての菊池の人生に大きな影響をもたらして無事に帰国へと至ったのである。
「スロプロ」と言われた生活を始めてから1ヶ月近くスロットに触らない日々などなかったため、スロットのメダル、レバー、ボタン、ホールに鳴り響くサウンドの全てが待ち遠しかった帰りの機内。まるでその時の記憶が蘇るかのように「スロットに触れたい」気持ちが勝るこの辺りで、アラブ諸国諸国ツアーでのお話は締めておこう。また続きはいつかどこかで。
第76話へ続く↓↓↓