時はうつろいゆくもの。
その時その場所で見た光景はいつしか記憶になり、思い出とともに昇華されていく。その過程でそれはどことなく美しく、また、時に愛しささえ覚えさせる。
菊池の記憶にあるスロットとはまさにそういった類のもので、2019年現在、世はまさに5号機の終焉を間近に控えた時代の節目。言い換えれば新しい時代の幕開けともいうべきタイミングである。
この時この瞬間がいつの日か思い出として語り継がれる頃には、恐らく今抱いている未来(6号機)への不安は昇華されているに違いない。それほどまでに、時代の流れの物事を押し進める力は凄まじいのだ。
2007年。この時もまた、ひとつの時代の終焉の時であった。
パチンコ店では当然パチンコがシェアの8割を占めており、スロットなど片隅に少しばかりのスペースを与えられる程度だったが、4号機の登場をきっかけに瞬く間にそのシェアを拡大。スロット専門店の登場なども日常的に行われていき、気がつけばパチンコ、パチスロ市場はとめどない繁栄を見せ、ついには30兆円産業へと成長を遂げた。
だが、射幸性の高さが問題視され、大幅な規制にともなって2005年に登場した5号機。その時から2年の歳月を経てついに4号機という名の、爆裂AT機、大量獲得機時代は終わりを告げることとなった。
リングにかけろやスパイダーマン2のハイスペック5号機の登場を経ての出来事であったが故、打ち手への衝撃は幾分か吸収されていたものの、最後の4号機としてホールに残っていた俺の空が一斉に撤去された朝。
柳川と菊池、ホールへ出向いた2人に主だった会話はなかったが、柳川の「これでもう終わりかな」と呟いた微かな声が、ホールの喧騒の中にあってまるで4号機へのレクイエムのように菊池の耳に届いた。
エンタメ魂78話へ続く↓↓↓